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東京地方裁判所 平成元年(特わ)1340号 判決 1990年2月28日

本店所在地

東京都港区元赤坂一丁目四番一号

近代プランニング株式会社

(右代表者代表取締役 田﨑庸三)

本籍

東京都中野区中野二丁目七番地

住居

東京都新宿区若葉一丁目二〇番地

ニューミハルパートⅡ一〇二号

会社役員

田﨑庸三

昭和三年一月六日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡辺咲子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人近代プランニング株式会社を罰金一億円に、被告人田﨑庸三を懲役二年六月に、各処する。

被告人田﨑庸三に対し、この裁判の確定した日から四年間、右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人近代プランニング株式会社(以下、被告会社という。)は、東京都港区元赤坂一丁目四番一号に本店を置き、不動産の売買及び仲介を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人田﨑庸三(以下、被告人という。)は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、受取手数料を除外するとともに架空の仲介手数料を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五九年一一月一日から同六〇年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億七六〇五万一八三一円(別紙1修正損益計算書参照)で課税土地譲渡利益金額が一億八九八万九〇〇〇円(別紙2脱税額計算書参照)であつたのにかかわらず、昭和六〇年一二月二三日、東京都港区西麻布三丁目三番五号所在の所轄麻布税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三〇二五万七八三一円で課税土地譲渡利益金額が零であり、これに対する法人税額が一二四三万円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成元年押第一〇一二号の1)を提出し、もつて、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億四〇三二万九六〇〇円と右申告税額との差額一億二七八九万九六〇〇円(別紙2脱税額計算書参照)を免れ

第二  昭和六〇年一一月一日から同六一年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四億二九六四万六九三七円(別紙3修正損益計算書参照)で課税土地譲渡利益金額が四億二七七五万三〇〇〇円(別紙4脱税額計算書参照)であつたのにかかわらず、昭和六一年一二月二五日、前記麻布税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二五六七万五〇七円で課税土地譲渡利益金額が一四〇六万三〇〇〇円であり、これに対する法人税額が一一九八万五六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、もつて、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二億六九六四万五二〇〇円と右申告税額との差額二億五七六五万九六〇〇円(別紙4脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人の当公判延における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書三通

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  受取手数料調査書

2  接待交際費調査書

3  旅費交通費調査書

4  支払利息割引料調査書

5  交際費の損金不算入額調査書(NO・1)

一  検察事務官作成の捜査報告書(土地譲渡利益金額について)

一  麻布税務署長作成の証明書

一  収税官吏作成の領置てん末書

一  商業登記簿謄本

判示第一の事実につき

一  検察事務官作成の次の各捜査報告書

1  捜査報告書(支払手数料)

2  捜査報告書(仲介手数料)

3  捜査報告書(留保金額に対する税額の計算について)

一  押収してある被告会社の昭和六〇年一〇月期の法人税確定申告書一袋(平成元年押第一〇一二号の1)

判示第二の事実につき

一  収税官吏作成の事業税認定損調査書

一  押収してある被告会社の昭和六一年一〇月期の法人税確定申告書一袋(同押号の2)

(法令の適用)

被告会社について

一  罰条

判示第一及び判示第二の各所為につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一、二項

二  併合罪の処理

刑法四五条前段、四八条二項

被告人について

一  罰条

判示第一及び判示第二の各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

いずれも懲役刑を選択

三  併合罪の処理

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に加重)

四  刑の執行猶予

刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は不動産の売買及び仲介を目的とする被告会社の代表取締役である被告人が受取手数料を除外し、架空手数料を計上するなどして、被告会社の二年度分の法人税合計三億八五五五万九二〇〇円を免れたというものであつて、そのほ脱金額は多額である上、その動機に特に酌むべき点はないし、その所得秘匿の態様も多数の架空領収証を利用するなど計画的で、犯情は悪質というほかなく、被告人らに刑事責任を軽視することはできない。

しかしながら、被告人は、本件発覚後全面的に犯行を認め、反省の態度を表明していること、被告会社につき修正申告がなされ、本税の納付が終了していることなど、被告人らに有利な事情も認められるので、これらの事情を総合勘案して、被告人らに対し、主文掲記の刑をもつて臨むこととし、なお、被告人に対しては、今回に限り社会内で自力更生させるのが相当であると判断して刑の執行を猶予した次第である。

(求刑 被告会社につき罰金一億三〇〇〇万円、被告人につき懲役二年六月)

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 稲田輝明)

別紙1

修正損益計算書

近代プランニング株式会社

自 昭和59年11月1日

至 昭和60年10月31日

<省略>

別紙2

脱税額計算書

近代プランニング株式会社

自 昭和59年11月1日

至 昭和60年10月31日

<省略>

別紙3

修正損益計算書

近代プランニング株式会社

自 昭和60年11月1日

至 昭和61年10月31日

<省略>

別紙4

脱税額計算書

近代プランニング株式会社

自 昭和60年11月1日

至 昭和61年10月31日

<省略>

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